く、ただ洗濯物をひろげるくらいのことに使っていまして、高さ十五尺に縦も横もともに十八尺でありますが、天井はもとから金色に塗られ、桁《けた》はちょうどお宅ののようにこしらえてあります。施療院でありましたころは、布地《きれじ》で蔽《おお》われていたのでした。それからまた、私どもの祖母時代に属する壁板細工もあります。けれども特にお目にかけたいのは、私の居間《いま》なのです。マグロアールが、少なくも十枚ばかりの壁紙の張られていました下に、絵画を見出したのです。いいものではないにしてもかなり見られます。テレマックが馬上にてミネルヴァに迎えらるる所、それからまた彼が庭にいる所など。画家の名はちょっとわかりません。またローマの婦人たちが一夜出歩いてゆく場所。どう申したらよろしいでしょうか、まあ多くのローマの男子や(この所一語読み難し)婦人や、その多くの従者たちがいます。マグロアールがそれらの絵からすっかり塵《ちり》を払ってくれました。そしてこの夏には、室の所々の破損を直し全部を塗りかえるように言っていますので、私の室はまったく博物館のような趣になりますでしょう。彼女はまた納屋の片すみに古風な二つの木
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