間行ったが、もうだれにも出会わなかった。二、三度彼は、何か人の横たわっているようにもまた蹲《うずく》[#ルビの「うずく」は底本では「うづく」]まっているようにも見えるものの方へ、野の中をかけて行った。がそれはただ荊棘《いばら》であったり、地面に出てる岩であったりするきりだった。終わりに、三つの小道が交叉《こうさ》している所に出て、彼は止まった。月が出ていた。彼は遠くに目をやって、最後にも一度叫んだ。「プティー・ジェルヴェー! プティー・ジェルヴェー! プティー・ジェルヴェー!」その叫びは靄《もや》の中に消え失せて、反響をも返さなかった。彼はなおつぶやいた。「プティー・ジェルヴェー!」しかしその声は弱々しくてほとんど舌が回らないかのようだった。それは彼の最後の努力であった。彼の膝はにわかに立っているにたえられなくなった。あたかも何か目に見えない力によって悪心の重みで突然押しつぶされたかのようだった。彼はある大きな石の上にがっくりと身を落として、両手で髪の毛をつかみ、顔を膝に押しあて、そして叫んだ。「ああ俺は惨《みじ》めな男だ!」
その時彼は胸がいっぱいになって、泣き出した。十九年この方
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