プティー・ジェルヴェー!」
 彼は口をつぐんで、待った。
 何の返事もなかった。
 野は荒涼として陰鬱《いんうつ》だった。彼は広々とした空間にとりかこまれていた。まわりにあるものとてはただ、見透かせない闇と声をのむ静寂とばかりだった。
 凍るような北風が吹いて、彼のまわりのすべてのものに悲愴《ひそう》な気を与えていた。あたりの灌木《かんぼく》はいうにいわれぬ狂暴さでそのやせた小さな枝をふり動かしていた。あたかもそれはだれかを脅かし追っかけてるがようだった。
 彼はまた歩き出し、それからかけ出した。そして時々立ち止まっては、最も恐ろしいまた最も悲しげな声をしぼって寂寞《せきばく》の中に叫んだ。「プティー・ジェルヴェー! プティー・ジェルヴェー!」
 もし少年がそれを聞いたとしても、必ずや恐れて身を現わさなかったであろう。しかし少年はもちろんもう遠くに行っているに違いない。
 ジャン・ヴァルジャンは馬に乗った一人の牧師に出会った。そのそばへ行って言った。
「司祭さん、あなたは子供が一人通るのを見かけられはしませんでしたか。」
「いいえ。」と牧師は言った。
「プティー・ジェルヴェーというん
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