やぶ》のうしろにすわった。地平線にはアルプス連山がそびえてるばかりだった。遠く村落の鐘楼の影さえも見えなかった。ジャン・ヴァルジャンはディーニュから多分三里くらいはきていた。平野を横切っている一筋の小道が、藪から数歩の所に走っていた。
彼は考えに沈んでいた。その様子は出会う人の目に彼のまとったぼろを、いっそう恐ろしく映じさせたであろう、とその時、彼の耳に楽しそうな響きが聞こえてきた。
彼は首をめぐらした。そして十歳ばかりのサヴォア生まれの少年が歌を歌いながら小道をやって来るのを見た。絞絃琴《ヴイエル》を脇《わき》につけ、モルモットの箱を背に負っていた。地方から地方へ渡り歩いて、ズボンの破れ目から膝頭《ひざがしら》をのぞかせてる、あのおとなしい快活な少年の一人であった。
歌をうたいながら少年は、時々歩みを止めて、手に持ってる数個の貨幣を手玉に取ってもてあそんでいた。おそらくそれは彼の全財産であったろう。その貨幣のうちには一つ四十スー銀貨がはいっていた。
少年はジャン・ヴァルジャンには気がつかないで藪のそばに立ち止まった、そして一握りの貨幣を放り上げた。それまで彼は巧みにそのすべて
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