はわからない。何かあることを知らせんためであったか、または脅かさんがためであったか? 彼自身にもわからない一種の本能的な衝動に従ったのみであったろうか? とにかく彼は、突然老司教の方へふり向き、両腕を組み、あらあらしい目つきで見つめながら、嗄《しゃが》れた声で叫んだ。
「ああなるほど! こんなふうにあなたのすぐそばに私を泊めるのですな!」
 彼はふと口をつぐんで、何かある恐るべきものを含んだ笑い方をしながら付け加えた。
「よく考えてみましたか? 私が人殺しではないというようなことをだれかが言いでもしましたか?」
 司教は天井の方へ目をあげて、答えた。
「それは神の知らるるところです。」
 それから、祈りをしあるいは独語をしている人のように脣《くちびる》を動かしながら荘重に、司教は右手の二本の指をあげて男の上に祝福を祈った。が彼は首もたれなかった。そして頭をめぐらしもせず、うしろを顧みもせずして、寝所にはいった。
 寝所に人が泊まる時には、礼拝所の中に大きなセルの幕が一方から他方へ張りめぐらされて祭壇を隠すことになっていた。司教はその幕の前を通る時に跪《ひざまず》いて、短い祈祷をした。

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