葉を向けながら、男に右の細かい話をしてきかせました。兄は何度もそのグリュランのおもしろい有様をくり返しまして、それがその男のための逃《のが》れ場所であることを、直接にぶしつけに説かないで自然にわからせようと願っているかのようでありました。
それから一つ私の心を動かしたことがございます。その男は前に申したとおりの者なのです。ところが私の兄は、彼がはいってきた時キリストについて二、三のことを申しましたほかには、食事の間もまたその晩中も、その男に身分を思い起こさせまた自分がだれであるかを知らせるようなことは、一言も言わなかったのであります。ちょっと考えれば、多少の説教などをいたし、囚人の上に司教の威を示して、その通りがかりの印象を深くしてやるのにいい機会であったように思われます。またその不幸な男を家に入れてやったことでありますから、その身体を養ってやるとともに心をも養ってやり、いくらかその罪を責めるとともに訓戒や忠告を与えたり、または彼の将来の善行を勧めながら少しの慈悲を施してやりますのに、ちょうどいい場合のようにも思われるのでありました。しかるに兄は、彼がどこの生まれであるかを聞きもしな
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