。それから背中の背嚢が邪魔になり、またそれは、ありあわせの枕《まくら》となるので、負い皮の留金《とめがね》をはずしはじめた。その時、恐ろしいうなり声が聞えた。彼は目をあげてみた。大きな番犬の頭が、小屋の入り口のやみの中に浮き出していた。
 犬小屋だったのである。
 彼自身も力ある恐ろしい男であった。彼は杖をもって身構え、背嚢を楯《たて》となし、そしてうまく犬小屋から出ることができた。もとより、そのために衣服の破れは更に大きくなったのではあるが。
 彼はまたその庭から外へ出た。しかし犬を近よらせないためにあとずさりしながら、撃剣の方で隠ればら[#「隠ればら」に傍点]と呼ばるる仕方で杖を振り回さなければならなかった。
 漸《ようや》くにして木柵を越えて通りに出たが、彼はもはやただ一人で、宿るべき場所もなく、身を蔽《おお》う屋根も身を避ける所もなく、藁の寝床とあわれな犬小屋からさえも追い出されたのであった。彼はある石の上に、腰をおろすというより倒れてしまった。そこを通る人があったら、彼の叫ぶのを聞いたであろう、「俺《おれ》は犬にも及ばないのか!」
 やがて彼はまた立ち上がって歩き出した。町か
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