そ》にせよ真《まこと》にせよ、人の身の上について言わるることは、その人の生涯《しょうがい》のうちに、特にその運命のうちに、往々実際の行為と同じくらいに重要な位置を占むるものである。ミリエル氏はエークスの高等法院の評議員のむすこであって、顕要な法官の家柄だった。伝えらるるところによれば、彼の父は、彼に地位を継がせようとして、当時、法院関係の家庭にかなり広く行なわれていた習慣に従い、彼をごく早く十八歳か二十歳かの時に結婚さしたそうであるが、彼はその結婚にもかかわらず、多くの噂の種をまいたとかいうことである。背《せい》は少し低い方であったが、品位と優美と才気とを備えたりっぱな男であった。その生涯の前半は社交と情事とのうちに費やされた。そのうちに革命となり、種々の事件が相次いで起こり、法院関係の家柄は皆多く虐殺され、放逐され、狩り立てられ、分散してしまった。シャール・ミリエル氏は革命の初めからイタリーに亡命した。彼の妻は、そこで、長くわずらっていた肺病のために死んだ。彼らには子がなかった。それからミリエル氏の運命にはいかなることが起こったか。フランスの旧社会の瓦解《がかい》、彼の一家の零落、一
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