うちに同じような悩みがあるのを察したし、彼は彼女の悲しみを見てとった。二人はそれをたがいに打ち明けはしなかったが、それを共通のものにした。その後彼女は、母とクリストフとを結びつけてる感情に気がついた。彼らは彼女に秘密を知らせはしなかったが、彼女は自分もその秘密の仲間であるように思った。そして彼女は、グラチアから臨終のおりに頼まれた使命の意味を知っていたし、今はクリストフの手にはまってる指輪の意味をも知っていた。かくて彼女と彼との間にはひそかな関係が存在していた。彼女はそれをはっきり理解しないでも、その複雑な意味を感ずることができた。彼女は心から彼に愛着していた。ただ彼の作品をひいたり読んだりするだけの努力は、かつてなし得なかった。かなりりっぱな音楽の才をもってはいたが、自分にささげられた楽譜のページを切るだけの好奇心さえなかった。彼女は彼と親しく話をしに来ることが好きだった。――彼のところでジョルジュ・ジャンナンに会えることを知ると、いっそうしばしばやって来た。
そしてジョルジュのほうでも、クリストフのところへ出入りすることを、今までになく楽しみとし始めた。
それでも、二人の若者は
前へ
次へ
全340ページ中285ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング