非常に彼らの気に入っていた。というのは、彼ら自身の運命の象徴とも多少なるべきもので、約束の土地[#「約束の土地」に傍点]というのだった。クリストフはその曲のことをしばしばグラチアへ話していた。初演はつぎの週に行なわれることになっていた……。彼に心配をかけてはならなかった。彼女は単なる風邪《かぜ》らしいと手紙に書いた。つぎにそれでもなお言いすぎてる気がした。彼女は手紙を引き裂いた。そしても一つ書き直すだけの力がなかった。晩に書こうと考えた。晩にはもう間に合わなかった。彼を呼ぶ間もなかった。手紙を書く間さえなかった……。物事はいかに早く死滅することぞ! 数世紀かかってこしらえられたものも数時間で破壊される……。グラチアはようやくのことに、自分の指にはめてた指輪を娘にやって、それを自分の友に渡してくれと頼んだ。これまで彼女はオーロラとあまり親しんでいなかった。今やこの世を去るときになって、あとに残す娘の顔を心こめて見守った。自分の握手を友に伝えてやるべき娘の手へ取りすがった。そしてうれしく考えた。
「私はすっかりこの世を去りはしない。」
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「何ものぞ、予が耳に響き渡る
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