ても、または、ある者は特権者のために貴族的な旧館を建て直そうとし、ある者は民衆に開かれて集団的魂が歌うべき大広間を作ろうとして、過去の改造者と未来の建設者とが共に働いてる、芸術界においても、みなそうです。それにまたこの巧妙な動物らは、何をなそうと常に同じ巣ばかりを作るのです。海狸や蜜蜂《みつばち》のような彼らの本能は、いかなる時代にあっても、彼らに同じ動作をさせ、同じ形を見出させるのです。もっとも革命的な者もおそらく、みずから知らず知らずに、もっとも古い伝統に執着してる者かもしれません。産業革命主義者やもっとも特異な新進著作家などのうちに、私は中世紀の魂を見出したことがあります。
今や私は彼らの騒々しいやり方にふたたび馴《な》れましたので、彼らが働くのを愉快にながめています。けれどうち明けて言いますと、私はあまりに年老いてる厭世《えんせい》家ですから、彼らのどの家にはいっても安楽な心地はしません。私には自由な空気が必要です。とは言え、彼らはなんというりっぱな労働者であることでしょう! それが彼らのもっともすぐれた美点です。その美点のために、もっとも凡庸な者や腐敗した者までが奮起させられています。それにまた、彼らの芸術家らのうちにはなんという美の官能があることでしょう! 私はそれに昔はさほど気づきませんでした。あなたは私に物を見ることを教えてくださいました。私の眼はローマの光によって開かれました。あなたの国の文芸復興期の人たちは、私にこの国の人々を理解さしてくれました。ドビュッシーの音、ロダンの像、シュアレスの句は、あなたの国の一五〇〇年代の芸術家らと同じ系統のものです。
それでも、私に不快なものが当地にはあまりないというのではありません。昔私をひどく怒らした広場の市[#「広場の市」に傍点]の旧知を、私はふたたび見出しました。彼らは昔とほとんど変わってはいません。しかし私のほうは悲しいかな、すっかり変わってしまいました。私はもう峻烈《しゅんれつ》な態度をとり得ません。彼らのうちのだれかを苛酷《かこく》に批判したくなるときに、私はみずから言います、「お前にはそんな権利はない、お前は強者だと自信しているが、彼らよりももっとひどいことをしてきたではないか、」と。それからまた、無用なものは何一つ存在していないこと、もっとも下賤《げせん》なものも劇の筋書きのうちに一つの役目
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