領し、自然原素を従え、自然の最後の城砦《じょうさい》を打ち破り、空間を辟易《へきえき》させ、死を辟易させるがいい……。
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ダイダロスは虚空を[#「ダイダロスは虚空を」に傍点]窮《きわ》めて[#「めて」に傍点]……
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ラテン語の選手たる君はそれを知っているかい。その意味を説明することくらいはできるだろう。
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彼は[#「彼は」に傍点]三途《さんず》の川に侵入せり[#「の川に侵入せり」に傍点]……
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それが君たちの運命だ。征服者らよ幸いなれ!」
彼は新時代に落ちかかってくる勇壮な活動の義務をきわめて明らかに示したので、ジョルジュはびっくりして言った。
「でも、もしあなたがそれを感じてるんでしたら、なぜ私どもといっしょにはならないんです?」
「僕にはほかに仕事があるからだ。さあ、君の事業をなすがいい。できるなら僕を追い越したまえ。僕はここに残って見張りをしている……。君は、山のように高い鬼神が箱の中に入れられてソロモンの封印をおされたという話を、千一夜物語[#「千一夜物語」に傍点]の中で読んだことがあるだろう……。その鬼神はここに、僕たちの魂の底に、君がのぞき込むのを恐れてるこの魂の底にいるのだ。僕や僕の時代の人たちは、その鬼神と戦うことに生涯《しょうがい》を費やしてきた。僕たちのほうが打ち勝ちもしなかったし、鬼神のほうが打ち勝ちもしなかった。今では、僕たちと彼とはどちらも息をついている。そしてたがいに顔を見合わしながら、なんらの怨恨《えんこん》も恐怖も感ぜずに、なしてきた戦いに満足して、約束の休戦の期限がつきるのを待っている。で君たちはその休戦期間を利用して、力を回復し、また世界の美を摘み取りたまえ。幸福でいて、一時の静穏を楽しみたまえ。しかし忘れてはいけない。他日、君たちかあるいは君たちの後継者たちは、征服から帰ってきて僕がいるこの場所に立ちもどり、僕がそばで見張りをしてるこの者にたいして、新しい力でふたたび戦いをしなければならないだろう。そして戦いはときどき休戦で途切れながら、両者の一方が打倒されるまでつづくだろう。君たちは僕たちより強くて幸福である順番なんだ……。――まあ当分のうちは、やりたかったら運動《スポーツ》もやるがいい。筋肉と心とを鍛えるがいい。そしてむずむ
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