嫉妬《しっと》深い気荒な女だった。熱烈に子供をかわいがり、手荒に子供をいじめつけ、子供が病気になると気も狂わんばかりに絶望するのだった。機嫌《きげん》が悪いときには、食事どころか一片のパンも与えないで子供を寝かしておいた。手を引いて往来を歩くようなとき、子供が疲れてしまったり、もう前へ進みたがらなくて地面にすわったりしようものなら、足で蹴《け》りつけて引き立てた。彼女の言葉には取り留めがなかった。涙を流してるかと思うとまたすぐに、ヒステリー的な陽気さではしゃいでいた。彼女は死んだ。祖父は当時六歳になる子供を引き取った。彼は子供をごくかわいがった。しかし独特のやり方で愛情を示すのだった。すなわち職業を覚えさせるために朝から晩まで、子供をひどく取り扱い、いろんな悪口を浴びせかけ、耳を引っ張ったり打ったりした。それと同時にまた、自分の社会的な反僧侶的な教理を教え込んだ。
 エマニュエルは祖父がけっして意地悪でないことを知っていた。けれどその頬《ほお》打ちを防ぐためにはいつでも肱《ひじ》を上げるだけの覚悟があった。彼にはこの老人が恐《こわ》かった。ことに老人が酩酊《めいてい》してるときは恐かっ
前へ 次へ
全367ページ中90ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング