った。一つの古靴|棚《だな》と二つの腰掛とを並べるだけの場所しかなかった。昔からの古靴屋の例によって、ここの主人も歌を歌ってるのが毎日聞こえた。彼は口笛を吹いたり、古靴の底をたたいたり、俗歌や革命歌を嗄《しわが》れた大声で歌ったり、通りかかる近所の女どもを窓越しに呼びかけたりしていた。翼の折れた一羽の鵲《かささぎ》が、ぴょこぴょこ人道を飛び歩いて、門番小屋のほうから彼のところへやって来た。そして店の入り口の階段のいちばん上に立ち止まって、古靴屋をながめた。古靴屋はちょっと仕事の手を休めて、甲高い声で卑猥《ひわい》なことを言いかけたり、万国労働歌[#「万国労働歌」に傍点]を口笛で吹いてきかしたりした。鵲は嘴《くちばし》をもたげて、真面目《まじめ》くさった様子で聞いていた。そしてときどき、挨拶《あいさつ》でもするように嘴をつき出して水潜りめいた動作をし、そしてまた身体の平均をとるために無器用な羽ばたきをした。それから突然向きをかえ、相手が何か言いつづけてるのをそのままにして、一方の翼と他方の折れ残りの翼とで、腰掛の倚木《よりき》の上に飛び上がり、そこから近所の犬どもをからかった。すると古靴
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