彼らといっしょに飲食し、笑ったり怒ったりした。そして彼らのほうでは、彼といっしょに激しく論議はしても、彼に不信の念をいだいてはしなかった。彼は思ったとおりのぶしつけな口をきいていた。そして根本においては、彼らの味方であるか敵であるかは彼自身にもよくわかっていなかったろう。彼はそれをみずから考えたことがなかった。もちろん、いずれかの選択を強《し》いられたら、彼は社会主義に反対し、国家――役人を、機械人をこしらえ出す奇怪な実体たる国家――のあらゆる理論に反対して、産業革命主義者となったであろう。彼の理性は同業組合的な集団の力強い努力に賛成を表していた。そういう集団の両刃の斧《おの》は、社会主義的国家の生命なき抽象観念を打ち拉《ひし》ぐとともに、また、生産力なき個人主義、精力を細分する観念、集合の力を個々の微力へ分散する観念――一部はフランス大革命に責任のある近代の大不幸、それをも打ち拉いてるのだった。
しかし天性は理性よりも強いものである。クリストフは、産業組合――弱者の恐るべき同盟――に接触すると、心中の強健な個人主義が猛然と頭をもたげてきた。戦いに進み行くためにはいっしょに鎖でつなが
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