できなかった。彼らは遊戯にしか――音響の遊戯もしくは観念の遊戯にしか、興味を覚えなかった。大部分の人々は他の世間的な興味に気をひかれており、「必要」でもない雑多な仕事に心を分かつのに慣れていた。芸術の表皮の下まで見通してその隠れたる心臓を感ずることは、彼らにはほとんど不可能だった。彼らにとっては、芸術は肉と血とでできてるものではなかった。それは単に文学だった。彼らの批評家らは、彼らが享楽主義から脱する力のないことを、理論に――もとより頑迷《がんめい》な理論に、仕立て上げていた。たまたま幾人かの人が、芸術の力強い声に共鳴するほど鋭敏であることがあっても、その人々にはそれを堪えるだけの力がなくて、実生活にたいしては調子の狂った者となるのだった。いずれにしても、神経病者か中風患者かばかりだった。こういう病院の中に、芸術はいったい何をしにやって来たのか?――それでも近代の社会では、芸術はそれらの不具廃疾者なしには済ませられなかった。なぜなら、彼らは金銭や新聞雑誌をもっていたから。ただ彼らばかりが、芸術家に生活の方法を安全ならしめてやることができるのだった。それゆえつぎの屈辱に甘んじなければなら
前へ
次へ
全367ページ中46ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング