の主君を求める君たちの心底には、君たちの弱さが隠れているのだ。力は光のごときものである。それを否定する者は盲目だ。理論も捨て暴力も捨て、平然として強者になりたまえ。植物が日光のほうへ向くと同じに、弱者の魂はことごとく君たちのほうへ向くだろう……。」
しかし、政治上の議論に時間を空費する隙《ひま》はないと抗弁しながらも、彼はその外見ほど政治に無頓着《むとんじゃく》ではなかった。彼は芸術家として社会の不安を苦しんでいた。熱情が一時欠乏するおりには、自分の周囲を見回して、だれのために自分は書いてるのかとみずから疑うことがあった。すると彼は、現代の芸術の悲しむべき顧客を、かの疲れてる優秀者や享楽的な有産者らを、眼に浮かべた。そして考えた。
「ああいう人々のために働いてなんの利益があろう?」
もちろん彼らのうちには、教養があり、人の技能に敏感であって、精練された感情の新しさやあるいは古風さ――(二つとも同じことである)――を味わうことさえもできるような、すぐれた精神の人々が欠けてはいなかった。しかし彼らは感情が鈍っていて、あまりに知的であまりに生気に乏しかったので、芸術の現実性を信ずることが
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