色の燈心草が生えていた。周囲はすべて、秋で成熟した森に取り巻かれていた。赤銅《しゃくどう》色の※[#「木+無」、第3水準1−86−12]《ぶな》、金褐色の栗《くり》、珊瑚《さんご》色の房をつけた清涼茶、小さな火の舌を出してる炎のような桜、橙《だいだい》色や柚子《ゆず》色や栗色や焦げ燧艾《ほくち》色など、さまざまな色の葉をつけてる苔桃《こけもも》類の叢《くさむら》。それはあたかも燃ゆる荊《いばら》に似ていた。そしてこの燃えたつ盆地のまん中から、種子と日光とに酔った一羽の雲雀《ひばり》が舞い上がっていた。
 クリストフの魂はその雲雀のようであった。やがてふたたび落ちること、そしてなお幾度も落ちること、それをみずから知っていた。しかしまた知っていた、下界の人々に天の光明を語ってきかせる歌をさえずりながら、火の中へと撓《たゆ》まずにふたたびのぼってゆくことを。



底本:「ジャン・クリストフ(四)」岩波文庫、岩波書店
   1986(昭和61)年9月16日改版第1刷発行
※「われは堅き金剛石《ダイヤ》…」以下の冒頭の一節は、底本では、楽譜の図版の下に組まれています。
入力:tatsuki

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