を言われるときも微笑んでいた。ブラウンは彼女を徹頭徹尾忠誠な女中だと思っていた。彼女の平和な様子はアンナの冷やかさと対照をなしていた。それでも多くの点で彼女はアンナに似寄っていた。アンナと同様に、口数がきわめて少なく、注意を配ったきちんとした服装をしていた。アンナと同様に、きわめて信心深く、いつも礼拝の御供をし、信仰上の務めを正確に果たし、家事の務めに細々《こまごま》と気を配っていた。清潔で時間をよく守り、風儀や料理にかけては欠点がなかった。一言にして言えば、模範的な女中であって、かつ、家庭の害物の完全な標本だった。女性の本能からして女の内心の考えをほとんど見誤ったことのないアンナは、この女中になんらの幻をもかけてはいなかった。二人はたがいに嫌《きら》い合い、嫌い合ってることを知っており、しかもそれを少しも様子に示さなかった。
 クリストフがもどってきたその晩、アンナはもうけっして彼に会うまいと決心していたにもかかわらず、悩みに堪えかねて彼のもとへやって行ったとき、暗闇《くらやみ》の中に壁を手探りでこっそり歩を運んだ。そしてクリストフの室にはいりかけると、自分の素足の蹠《あしのうら》に
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