かし町の人にたいして町の人を保護するものは何もなかった。そして、たえず眼前にぶら下がってる公然の侮辱という懸念は、この町がみずから誇りとしてる清浄潔白な外観を風俗中に維持するのに、多少役だたないでもなかった。
 アンナはそういう恐れの重みに圧倒されていた――しかもそれは条理の立たない恐れだった。彼女は恐るべき理由をあまりもってはいなかった。彼女は町の世論の中ではほとんど物の数でなかったので、彼女を攻撃しようとの考えを起こす者すらないはずだった。けれども彼女は、全然の孤独の中に引きこもってばかりいたし、また不眠の数週間を過ごしたため、心身は疲憊《ひはい》し神経は荒立っていたので、きわめて不道理な恐怖をも想像しがちになっていた。彼女は自分を好まない人々の憎悪を大袈裟《おおげさ》に考えていた。人々から嫌疑《けんぎ》をかけられてると思っていた。ちょっとしたことで身の破滅となるに十分だった。そんなことはないと言ってくれる者はだれもいなかった。もう侮辱ばかりであり、無慈悲な探索ばかりであり、通行人の眼前に裸の心をさらされるばかりだった。その残酷な不名誉は、思っただけでも恥ずかしくてたまらなかった。
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