ブラウンは言った。
彼はまだ何か尋ねたいことがありながら、相手の視線を避けて言い出しかねてるようなふうで、クリストフの袖《そで》をつかまえていた。それから彼は手を離し、溜《た》め息をつき、そこを立ち去った。
クリストフは自分の新たな虚言に圧倒された。彼はアンナのもとへ駆けていった。心乱れて口ごもりながら、ありし次第を話してきかした。アンナは沈鬱《ちんうつ》な様子で耳を傾けて、そして言った。
「じゃあ知らせるがいいわ! 構うものですか。」
「どうしてあなたはそんなことを言うんです!」とクリストフは叫んだ。「どうしても、どうしても、私はあの人を苦しめたくない。」
アンナは怒った。
「苦しめるのがなんです? 私も苦しんでるじゃありませんか。あの人も苦しむがいい!」
二人は苦々《にがにが》しい言葉を言い合った。彼は彼女が自分自身ばかりを大事にしてるのをとがめた。彼女は彼が彼女のことよりも夫のことを多く考えてるのを非難した。
しかしすぐそのあとで、もうこんなふうでは生きていられないから、ブラウンへすっかり白状しようと、彼が言い出したとき、こんどは彼女のほうで、彼を利己主義者だとし、彼の
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