がゆえに愛す」――そこにこそ、普通の理由を過ぎ越えた一つの理由がある。狂気の沙汰《さた》というか? それはなんらの意味をもなさない。その狂気沙汰はなにゆえであるか?
それは、人がおのれのうちに閉じこめてる、一つの隠れたる魂が、もろもろの盲目な力が、悪魔が、存するからである。人間が存在して以来人間の全努力は、その内心の海洋にたいして、理性と宗教との堤防を築くことに向けられてきた。しかしながら暴風雨が襲来し(そしてもっとも豊富な魂はもっとも暴風雨を受けやすい)、堤防は破壊され、悪魔は自由の身となり、同様な悪魔から煽《あお》り立てられてる他の魂と相面して立つ……。それらがたがいに飛びついてつかみ合う。憎か? 愛か? 相互破壊の狂乱か?――情熱、それこそ獰猛《どうもう》な魂である。
逃げ出そうと無駄《むだ》な努力を二週間つづけたあとに、クリストフはアンナの家にもどって来た。もはや彼女と離れて生きることができなかった。息がつけなかった。
それでも、彼はなお闘《たたか》いつづけた。彼がもどって来た晩、二人は口実を設けて顔を合わせもせず、食事もいっしょにしなかった。夜になると、どちらも自分の
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