ては存在しなかった。
クリストフは外に出た。ブラウンとアンナとは食卓についた。食事の最中に、ブラウンはにわかに立ち上がって窓を開けた。アンナが気絶したのだった。
クリストフは旅行を口実にして、その町から二週間姿を隠した。アンナは一週間の間、食事の時間を除いては、居室に閉じこもってばかりいた。彼女はまた自分の良心や習慣にとらえられ、脱したとみずから思っていたがけっして脱せられるものではない、過去の生活にまたとらえられた。いくら眼をふさいでも駄目《だめ》だった。日ごとに心痛が増してきて、心の奥深くはいり込んで来、ついにはそこに腰をすえてしまった。つぎの日曜日には、彼女はなお寺院へ行くのを断わった。しかしそのつぎの日曜日には、寺院へ出かけて、それからもうけっして欠かさなかった。彼女は服従したのではなかったが、打ち負かされてしまった。神は敵であった――のがれることのできない敵だった。彼女は神のもとへ、服従を強《し》いられた奴隷のような暗黙の憤りをいだいておもむいた。彼女の顔にはその礼拝の間、敵意ある冷淡さしか見えなかった。しかし魂の奥底では、彼女の宗教的生活はすべて、主《しゅ》にたいする
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