恐れはしない。――また他の人々は、理性の楽しみを、一|徹《てつ》な論理を、そこで満足さしていた。彼らは人間に奉仕しなくて、観念に奉仕していた。それはもっとも勇敢な人たちだった。自分の階級の必然的な終焉《しゅうえん》を理論から引き出すことに、高慢な享楽を覚えていた。重荷の下に圧倒されるよりも、自分の予言が事実に裏切られるのを見ることのほうが、彼らにとってはいっそう苦痛だった。彼らはその知的陶酔のなかで、外部の人々へ叫んでいた。「もっと強く、もっと強く打てよ。われわれから何物も残ってはいけない。」――彼らは暴力の理論家となっていた。
 他人の暴力の理論家である。なぜならば、普通の例にもれず、それら暴虐な力の使徒たちはたいていいつも卓越した虚弱な人たちであった。そのうちには、彼らが破壊すべしと称してるその国家の役人が、しかも勤勉な真摯《しんし》な従順な役人が、一人ならずいたのである。彼らの理論上の暴力は、彼らの虚弱や彼らの怨恨《えんこん》や彼らの生活の圧搾などの反動だった。しかしまたことに、彼らの周囲に唸《うな》ってる暴風雨の前兆だった。理論家は気象学者に似ている。彼らが学術語で言うところの
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