を見てとったのである。彼らの希望は過大であったが、彼らの落胆も非常であった。民衆は彼らの呼び声に応じて集まって来なかった、もしくは逃げ出してしまった。幸いにやって来るとすれば、すべてのことを誤解して、有産階級の文化から悪徳をしか取り出さなかった。それにまた、多くの背徳漢が有産階級の使徒たちの間にはいり込んできて、民衆と有産者らとを同時に利用しながら、彼らの信用を失わしてしまった。そうなると、有産階級は呪《のろ》われたものであり、民衆を腐敗させることができるばかりであって、民衆はぜひともそれと袂別《べいべつ》すべきであり、単独で進んでゆくべきである、というように誠意ある人々には思われるのだった。それで彼らはもうなんらの実行もなし得なくなって、自分たちの力を俟《ま》たずかつ自分たちに反対して起こってくる一つの運動を、ただ予告するばかりだった。ある人々はそこに忍諦《にんてい》の喜びを見出した。自身の犠牲によって養われる、私心のない深い人類的同情、そうした同情の喜びを見出した。愛すること、自己を投げ出すこと! 若き人々は自分の資本にきわめて豊富であって、報酬を受けなくても済ましてゆける。欠乏を
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