んお》があることぞ!……ただ進め、進め! 通り越さなければいけないのだ!……強《し》いられたる仕事、責任ある家庭の心づかいは、人を引っとらえて、轅《ながえ》の間につながれて疲れきりながらも、立ったまま眠って進みつづける馬のようになす。――しかしまったく自由な人は、そういう空虚なときに自分を支持してくれ強いて進ましてくれるべきものを、何ももっていない。彼はただ習慣によって歩いてゆく。どこへ行ってよいかわからない。力は乱され、意識は暗くなる。気が茫《ぼう》としてるそういうおりに、一撃の雷電が彼の夢遊病的歩行を中止させるならば、彼にとっては災いなるかな! 彼は崩壊するばかりである……。

 パリーからの数通の手紙がようやく届いて、一時クリストフはその絶望的無感覚の状態から脱した。セシルやアルノー夫人から来た手紙で、彼に慰安の言葉をもたらした。憐《あわ》れむべき慰安、無益なる慰安……。苦悶《くもん》について語る者はみずから苦悶してる者ではない……。それらの手紙は彼へ、亡き友の声の反響をことにもたらした……。彼には答える勇気がなかった。そして手紙はそれきり来なかった。彼は喪心のあまり、自分の痕跡
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