っては、恥ずべき平和であり、祖国の分割である。ある者にとっては、戦争である。甲にとっては、過去の破壊であり、君主の放逐である。乙にとっては、教会の劫奪《きょうだつ》である。丙にとっては、未来の閉塞《へいそく》であり、自由の破滅である。民衆にとっては、不平等である。優秀者にとっては、平等である。各時代が選みとった不正は――各時代が反対する不正と賛成する不正とは、実に種々雑多である。
今はちょうど、世界の努力の大部は、社会的不正を滅ぼすために向けられていた――そして知らず知らずに、また新しい不正を作り出さんとしていた。
そして確かに、労働階級が数においても力においても増大してきて、国家の主要機関の一つとなって以来、社会的不正は大きくなって人の眼前に展開されていた。しかしその論客や詩人らの宣言にもかかわらず、労働階級の状態はさほど悪いものではなく、過去におけるよりもはるかによくなっていた。そして変化の原因は、この階級がより多く苦しむようになったことにあるのではなくて、より強くなったことにあるのだった。敵たる資本の力そのものによって、また、経済および工業上の発展の必然性によって、労働階級は
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