た。今はもうどんよりと流れていた。油ぎった水面に河底から立ちのぼる気泡《きほう》のように、呼び合う声、口笛の音、無頼漢の叫び声などが、その群集のどよめきを貫いて響き渡り、群集の幾層もの厚みを示していた。街路の先端、オーレリーの飲食店の近くには、堰《せき》のような音が起こっていた。警官や兵士の柵《さく》にぶつかって群集が押し返されていた。その障害物の前で、群集は一団に密集して、あちらこちらに逆まきながら、口笛を吹き唸《うな》り歌い笑っていた……。民衆の笑いこそは、言葉による出口を見出し得ないでいる陰暗な深い無数の感情を表現する、唯一の手段なのである……。
この群集は敵意をいだいてはしなかった。自分が何を欲してるのか知らなかった。それを知るまでは、いらいらした乱暴なしかもまだ悪意のないやり方で興がっていた――押したり押されたり、警官を侮辱したり、ののしりあったりして、興がっていた。しかし徐々に激昂《げっこう》していった。あとからやって来る人々は、何にも見えないのをじれて、人垣《ひとがき》に隠されて危険の度が少ないだけに、なおいっそう挑戦的だった。前のほうにいる人々は、押す者とそれに逆らう
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