ばすぐに発散してしまうことを、彼は知っていた。いつもそうだった。自分の最良のものは表現されることができなかった。彼の精神は花の咲き満ちた谷間に似ていた。しかしだれもそれに接近できなかった。摘み取ろうとするとすぐに花はしおれてしまった。ただわずかな花が、幾つかの脆《もろ》い新しい花が、香ばしい臨終の息をたてる少数の詩句が、辛うじて生き残り得るばかりだった。そういう芸術上の無力が、長い間オリヴィエの最大の悩みの一つだった。自分のうちに多くの生命を感じながらそれを救い上げ得ないとは!――今では、彼ももうあきらめていた。花は人から見られずとも咲くことができる。摘むべき人の手がない野にあっても、ますます美しくなるばかりである。日向《ひなた》に夢みる花の野は幸いなるかな! 一日の光といってはほとんどなかった。しかしオリヴィエの夢想はますます花を咲かしていた。悲しいやさしいまた奇怪な物語の数々を、彼はそのころみずから自分に語っていた。それはどこからともなくやって来て、夏の空にかかってる白雲のように漂い、空中に融《と》け散り、そのあとからまた他のが現われてきた。彼はそれに満たされていた。時には空に何に
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