を費やしたのだが、オリヴィエにはわずかな謝礼をしか要求しなかった。それほど彼は仕事の成功に満足していた。オリヴィエは彼に興味を覚えて、身の上をいろいろ尋ね、労働運動について彼がどう考えてるかを知りたがった。しかしゲランは労働運動については何にも考えていなかった。そんなことを気にかけていなかった。彼は労働階級に属していなかったし、またいずれの階級にも属していなかった。彼はただ彼だった。彼は書物をあまり読んでいなかった。その知的教養はすべて、パリーの真の民衆に生来そなわってる、官能と眼と手と趣味とででき上がっていた。彼は仕合わせな人間だった。そういう型の人物は、労働階級の中流者には珍しくない。そしてこの労働中流階級こそ、国民のうちのもっとも賢明なる種族である。なぜなら、手工と精神の健全な活動との間のりっぱな平衡を実現してるからである。
オリヴィエのも一人の知人は、いっそう独特な人物であった。それはユルトゥルーという郵便集配人だった。背の高い好男子で、清らかな眼、どちらも金|褐《かっ》色の口|髭《ひげ》と小|頤髯《あごひげ》、あけっ放しの快活な様子をしていた。ある日書留郵便をもってオリヴィ
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