いう者一人に比べて、いかに多くの他の者が、裏切ったり倦《う》み疲れたりしたことだろう! 彼らは皆、当時のあらゆる党派の為政家らを呑噬《どんぜい》してる災厄の犠牲となっていた。その災厄というのは、女もしくは金による腐敗、女と金と――(この二つの災いは実は一体にすぎないのである)――による腐敗だった。政府党のうちにもまた反対党のうちにも、第一流の才能ある人々がいた。国家の大人物たる素質を有する人々がいた。――(他の時代だったら、彼らはおそらく国家の大人物となっていたろう。)――しかし彼らには信念もなく性格もなかった。享楽の要求と習慣と倦怠とに萎靡《いび》しきっていた。享楽のために彼らは、広大な計画のさなかで取り留めもない行ないをしたり、または突然に、やりかけの仕事や祖国や主旨をも投げ捨てて休息し楽しんでいた。彼らは戦闘において戦死をするくらいには勇敢だった。しかしながら、大袈裟《おおげさ》な空言を弄《ろう》せず、自分の位置で泰然と事務を執りつつ、舵《かじ》の柄《え》を握りしめて、死んでゆくことのできる者は、それらの首領のうちのきわめて少数にすぎなかった。
そういう根深い弱点の意識のために、革命は跛にされていた。労働者らはたがいに非難し合ってその時間を過ごした。彼らの同盟罷業はいつも失敗した。その原因は、首領間のあるいは職業団体間の不断の不一致、改革派と革命派との間の不断の不一致、――威勢のよい大言壮語のもとにある深い臆病《おくびょう》心、――正規の降伏勧告に会えばただちにそれらの反抗者らを軛《くびき》の下に立ちもどらせる、従順な遺伝性、――他人の反抗を利用して、主人のもとに駆けつけ、手柄顔をなし、利益本位の忠義だてを高価に売りつけんとする者どもの、卑怯な利己主義と下劣さ、などであった。なお、群集につきものの無秩序、一般民衆の無政府性は、言うまでもないことだった。彼らはあらゆる革命的性質を帯びた団体的同盟罷業をなしたがっていた。しかし人から革命派だと見なされることを欲しなかった。彼らは銃剣に少しも趣味をもたなかった。卵をこわさないで玉子焼をこしらえ得るものだと思っていた。どうせこわされるものなら、自分の卵より他人の卵のほうを望んでいた。
オリヴィエは打ちながめ観察していた。そして少しも驚きはしなかった。それらの人々は実現せんと主張してるその事業よりもいかに劣ってるかを
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