。しかも彼らは芸術に裏切ったのだ。知力の光を救うこと、それが僕たち芸術家の役目だ。君たちの盲目的な闘争とそれとを混同してはいけないのだ。もし僕たちがその光を消えるに任しといたならば、だれがそれを保持してくれるだろうか。君たちも戦いのあとに光が少しも衰えていないのを見出したら、きわめて喜ばしいだろう。船の甲板上で戦ってる者がある一方には、機関の火を維持することにかかってる労働者が常にいなければいけない。すべてを理解して何物をも憎まないことだ。芸術家というものは、嵐《あらし》の間にも常に北を指してる羅針盤《らしんばん》だ……。」
 彼らは彼を飾言家だとし、羅針盤についてなら彼は自分の羅針盤を失ってるのだと言った。そして彼に親しい軽蔑《けいべつ》を示してうれしがった。彼らに言わすれば芸術家なるものは、もっとも少なくそしてもっとも愉快に働こうとくふうしてる狡猾《こうかつ》児にすぎなかった。
 彼はそれにたいして、自分は彼らと同様に働いており、彼ら以上に働いており、彼らほど仕事を恐れてはいないと答えた。怠業やいい加減の仕事や主義にまでもち上げられた怠惰などこそ、もっとも自分の嫌悪《けんお》してるものであると答えた。
「それらの憐《あわ》れむべき連中はみな、」と彼は言った、「自分の大事な皮膚のことをびくびくしてるのだ……。ああ僕は、十歳ほどのときからたえず働いている。が君たちは、君たちは仕事を好まない。根は中流人なのだ。……君たちにただ古い世界を破壊することだけでもできたら! しかし君たちにはそれもできない。それを望みもしない。いや望みもしないのだ。君たちがいくら喚《わめ》いても、脅かしても、すべてを絶滅せんとする者の真似《まね》をしても、無駄《むだ》なことだ。君たちには一つの考えしかない。成り上がって、中流者流の温かい床の中に寝ることだ。ただわずかに数百人の土工たちだけが、なぜか自分でも知らないで――楽しみのために――苦しみのために、古来の苦しみのために――常に自分の皮膚を破りあるいは他人の皮膚を破るの覚悟でいるけれど、その他の者は皆、機会さえあればいつでも陣営を脱して中流人の仲間入りをしようとばかり考えている。彼らは社会主義者になり、新聞記者になり、演説者になり、文士になり、代議士になり、大臣にもなる……。ばかばかしい、そんな奴にたいして怒鳴るのはよせよ。なんの甲斐《かい》
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