同時に、ほどよい慰安と穏やかな成功とを得さした。彼女は丈夫な食欲をもち、よく食べ、よく眠り、かつて病気にかかったことがなかった。
 まっすぐな分別ある謙譲なまったく平衡のとれた精神をもってる彼女は、何事をも苦にしなかった。なぜなら、今までのことや今後のことは気にかけないで、ただ現在にばかり生きてるからだった。そして、身体は丈夫であるし、生活は比較的革命の変動を受けないでいたので、彼女はたいていいつも幸福だった。喜んでピアノを勉強するとともに、また世帯を整え、家事のことを話し、あるいは何にもしなかった。彼女は生活の道を心得ていた。それもその日暮らしの生活ではなくて――(彼女は倹約で用心深かった)――その時きりの生活だった。彼女はいかなる理想にも心を煩わされていなかった。もし彼女に理想があると言い得るならば、その理想は市井的なものであって、彼女のあらゆる行動と思想のうちに静かに伸び広がっていた。それは、どんなことでも自分のなしてることを穏やかに愛すという一事だった。彼女は日曜日には教会堂へ行った。しかし宗教的感情は、彼女の生活のうちにほとんどなんらの地位をも占めていなかった。彼女は信仰もし
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