を結び直せば済むことだった。彼は微笑《ほほえ》んでいた。しかし友の深い愛情には心を動かされた。そのうえ彼は、恋のために臆病《おくびょう》になっていて、自分に確信がなかったから、進んでクリストフへ助言を求めた。ジャックリーヌを訪問したときの模様を話した。クリストフも彼と同じように感動していた。時とすると夜半に幾時間もかかって、友の恋路を平らにする方法を考えめぐらした。

 パリー近郊の、イール・アダンの森のほとりのちょっとした土地に、ランジェー家の別邸があった。この別邸の広庭のなかで、オリヴィエとジャックリーヌとは、彼らの一生に関する話を交えたのだった。
 クリストフも友について行った。しかし彼は家の中にハーモニュームを見つけて、それを演奏しながら、恋人同志を平和に散歩さしておいた。――実を言えば二人はそれを望んでいなかった。二人きりになるのを恐れていた。ジャックリーヌは黙っていて、多少敵意を見せていた。すでにこの前の訪問のときオリヴィエは、彼女の様子の変わったこと、にわかの冷淡な素振り、よそよそしい酷《きつ》いほとんど反抗的なある眼つきを、感じたのだった。そしてぞっとさせられていた。彼
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