ってしまった。そして善良な牝鶏《めんどり》が専心に卵を孵《かえ》すように、二人の若い恋人の物語を育ててやった。二人が共に胸にしまってるその秘密を知ってる様子もしなければ、二人の間の仲介をもなさないで、ひそかに二人を助けてやった。
 彼は、オリヴィエがジャックリーヌとともに暮らして、幸福であり得るかどうかを見るために、ジャックリーヌの性格を研究するのが自分の義務だと、真面目《まじめ》な考えをした。そしてやり方がへまだったので、趣味や徳操などについておかしな問いをかけては、ジャックリーヌをうるさがらせてばかりいた。
「ほんとに馬鹿な人だ! どうするつもりかしら。」とジャックリーヌは、腹だちまぎれに考えて、背中を向けた。
 そしてオリヴィエは、ジャックリーヌがもうクリストフに構わないのを見て、晴れやかな心地がした。クリストフは、オリヴィエが幸福なのを見て、晴れやかな心地がした。彼の喜びはむしろ、オリヴィエの喜びよりもずっと大袈裟《おおげさ》に現われていた。そしてジャックリーヌは、自分よりもいっそうはっきりと二人の愛をクリストフが見てとってようとは思いがけなかったので、右のことがさっぱり腑《ふ
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