うかしら。ねえ、叔母さま、幸福になれましょうかしら?」
「私にはわかりませんね。でもそれはいくらかお前さんしだいですよ……。幸福になろうと思えば、人はいつでも幸福になれます。」
 ジャックリーヌは信じかねた。
「叔母さまは幸福でいらして?」
 マルトは愁《うれ》わしげな微笑をもらした。
「ええ。」
「嘘《うそ》? ほんとう? 幸福でいらして?」
「お前さんはそう思いませんか。」
「思ってますわ。でも……。」
 ジャックリーヌは言いやめた。
「なあに?」
「私は幸福になりたいんですけれど、叔母《おば》さまのような幸福にはなりたくありませんの。」
「まあかわいそうに! 私もそう望んでいますよ。」とマルトは言った。
「いいえ、」とジャックリーヌはきっぱり頭を振りながら言いつづけた、「第一、私は幸福にはなれそうにありませんもの。」
「私だってそうですよ。幸福になれようとは思っていませんでした。けれど人は世間から教わって、いろんなことができるようになるものです。」
「いいえ私は、教わりたくありませんわ。」とジャックリーヌは不安げに抗弁した。「思いどおりの幸福な身になりたいんですの。」
「でもどう
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