ず想《おも》いを焦がしていたり、いつも恋愛や恋愛のきっかけでいっぱいになっていること、それらのことを、ジャックリーヌとシモーヌとはみな打ち明け合った。けれどそれは、彼女らが大したことを感じてはいない明らかな証拠だったし、また、決して深い感情をいだかないための最上の方法でもあった。けれどその代わりに、それは慢性の病状となってきた。彼女らはみずからそれをあざけってはいたが、大事に養っていた。二人はたがいに刺激し合っていた。シモーヌのほうは空想的であり用心深くて、大それたことをより多く想像しがちだった。ジャックリーヌのほうは真面目《まじめ》であり熱烈であって、大それたことをより多く実行しやすかった。彼女は幾度もたいへんよからぬことを行ないかけた……。けれど彼女はそれをほんとうに行ないはしなかった。青春期にはたいていそうしたものである。生涯《しょうがい》のある時期においては、人は狂気|沙汰《ざた》の小動物となって――(吾人《ごじん》も皆一度はそうであった)――あるいは自殺のうちに、あるいは見当たりしだいの異性の腕のなかに、将《まさ》に身を投ぜんとするものである。ただ仕合わせにも、たいていの者は
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