そこで過ごした。信頼と勉励との日々。二人の室はきれいで明るくて晴れ晴れとしていて、畑地を見晴らす広い自由な眼界が開けていた。夜は寝台の上から窓越しに、雲の怪しい影が、どんよりした薄明るい空を過ぎるのが見えた。たがいに抱き合ったままうとうととしながら、喜びに酔った蟋蟀《こおろぎ》の鳴く声や、驟雨《しゅうう》の降りそそぐ音などが聞かれた。秋の大地の息――忍冬《にんどう》や仙人草《せんにんそう》や藤や刈り草の匂《にお》い――が、家の中にまた二人の身体に沁《し》み込んできた。夜の静けさ。添い寝の眠り。沈黙。遠い犬の吠《ほ》え声。鶏の歌。曙《あけぼの》の光が見えそめる。冷え冷えとした灰色の暁のうちに、遠い鐘楼で御告《アンジェリユス》の鐘が細い音をたてる。寝床の温《ぬく》みの中にある二人の身体は、その暁の冷気に震えて、なお恋しげにひしと寄り添う。外壁に取りついてる葡萄棚《ぶどうだな》の中には、小鳥のさえずりが起こってくる。クリストフは眼を開いて、息を凝らし、しみじみとした心で、自分のそばにうちながめる、眠ってる女の疲れたなつかしい顔を、恋のためのその蒼白《あおじろ》い色を……。
彼らの愛は利己
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