》な批評を惹起《じゃっき》し、それからドイツへ伝えられて、ドイツの芸術家が自国についてかく下劣な言辞を弄《ろう》するのを、人々は憤慨した。
 クリストフは、他の新聞の探訪員から面会を求められたので、それをいい機会だとして、ドイツ帝国[#「ドイツ帝国」に傍点]にたいする自分の愛を弁解し、ドイツ帝国内においても人は少なくともフランス共和国内におけると同じく自由であると言った。――ところが、その相手は保守的な新聞の記者であって、彼はすぐに非共和的な宣言をしたものだとされてしまった。
「ますます奇態だ。」とクリストフは言った。「いったい僕の音楽が政治となんの関係があるのか。」
「それがフランス人のいつものやり方だ。」とオリヴィエは言った。「ベートーヴェンについてなされてる論争を見てみたまえ。ある者は彼を過激民主派だとし、ある者は彼を僧侶《そうりょ》派だとし、あるいはペール・デーシェーヌの一派だとし、あるいは君主の奴僕だとしてるじゃないか。」
「なんだって! そんな奴らをベートーヴェンは蹴飛《けと》ばしてやるに違いない。」
「じゃあ君もそうするさ。」
 クリストフは実際そうしたかった。しかし彼は
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