私は、」とフランソアーズはクリストフに言った。「その男をどんなにか愛するところでした。」しかし役者はそのあとですぐに言い添えたのだった。
「ただ、お前にもわかってるだろうが、魚心あれば水心と言ってね……。」
彼女は処女だった。人からいろいろ挑《いど》まれても、いつもひどく恥ずかしがってはねつけていた。
その粗野な貞節、愛のない不潔な行為や卑しい肉欲にたいする嫌悪《けんお》、それらを、彼女は子供のときからもっていた。家の中で周囲に起こる悲しい事柄を見て、つくづく厭気《いやけ》を起こさせられてたからだった。――彼女はそのときもなおそれらを失わないでいた……。ああ不幸な彼女、彼女はひどい罰をになっていたのである! なんという運命の愚弄《ぐろう》だったろう!……
「では、」とクリストフは尋ねた、「あなたは承知したのですか。」
「ああ私は、」と彼女は言った。「それをのがれるためには、火の中に飛び込んでも構わないと思っていました。ところがその男は、泥棒として私を捕えさせるとおどかしたのです。私は他にしかたがなかったのです。――そうして私は、芸術の……また人生の、手ほどきを受けたのでした。」
「
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