などをいっこう気にかけていないもっとも独創的な音楽家を、ののしり散らしていた。ただ、りっぱな選挙論をもってるらしい一、二の作曲家ばかりは、その例外だとしていた。彼らの音楽がその選挙論よりずっと劣ってるのは残念なことだった。しかしそれは些事《さじ》にすぎなかった。そのうえ、彼らにたいする賛辞も、またクリストフにたいする賛辞でさえも、他の音楽家らにたいする非難ほど重大なものではなかった。パリーでは、一人の者を讃《ほ》めてる評論を読むときには、「だれのことが悪く言われてるか」と考えるのが、いつも慎重な方法である。
 オリヴィエは、新聞を読んでゆくに従って恥ずかしさに顔を赤くし、そして考えた。
「俺《おれ》はとんだことをしたものだ!」
 彼は講義をするのもようやくのことだった。自由の身になるとすぐに、家へ駆けもどった。クリストフが新聞記者らといっしょに出かけたことを知ると、このうえもなくびっくりした。昼食には帰って来るだろうと待ってみた。がクリストフは帰って来なかった。オリヴィエは時がたつにつれて心配になって考えた。
「彼らはクリストフに馬鹿《ばか》なことを言わしてるに違いない。」
 三時ごろ
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