ランスの広範な教養と心理的才能とであった。クリストフのほうは、ドイツの内的音楽と自然にたいする直覚力とであった。
 クリストフには、オリヴィエがフランス人であることを理解できなかった。オリヴィエは彼が見たどのフランス人にもあまり似寄っていなかった。彼はオリヴィエに会う前には、リュシアン・レヴィー・クールをフランス近代精神の典型だと見なしがちだった。が実は、レヴィー・クールはその漫画にすぎないのだった。そして今、レヴィー・クールよりもいっそう思想的に自由であり、しかもなお純潔であり堅忍である者らが、パリーにもいるということを、彼はオリヴィエの実例によって教えられた。けれど、オリヴィエやその姉はどうもまったくのフランス人ではないと、彼はオリヴィエに証拠だててやりたかった。
「お気の毒だが、」とオリヴィエは言った、「君はフランスについて何を知ってるんだい?」
 クリストフは抗弁して、フランスを知るためにいかに骨折ったかを述べたてた。ストゥヴァン家やルーサン家などの集まりで出会ったフランス人を列挙した。ユダヤ、ベルギー、リュクサンブール、アメリカ、ロシア、近東、などの生まれのフランス人や、また
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