ごした。
 二人はたがいにずいぶん異なってはいたが、どちらも純粋な地金ででき上がっていた。そして同じものでありながらも異なっているゆえに、なお愛し合った。
 オリヴィエは弱々しくて、困難と戦うことができなかった。一つの障害にぶつかると、すぐに辟易《へきえき》した。それも恐ろしいからではなくて、多少は臆病《おくびょう》なからであり、多くは、征服のために取らなければならない荒々しい粗暴な方法を忌みきらうからであった。彼の生活の方便は、出稽古《でげいこ》をしたり、例によって恥ずかしいほどの報酬で、芸術の著書をしたり、またまれには雑誌の原稿を書いたりすることだった。その原稿もけっして自由なものではなく、ごく興味の薄い題目に関するものだった。――彼が興味をもってる事柄は喜ばれなかった。彼のもっとも得意なものはかつて求められなかった。詩人であるのに評論を求められた、音楽に通じてるのに絵画論を喜ばれた。そんなことについてはくだらないこときり言えないのは、自分でもよくわかっていた。しかしそれがちょうど人に好かれる事柄だった。かくて彼はわかりやすい言葉で凡俗を相手に書いた。ついにはみずから厭気《いやけ》
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