アントアネットを愛してるのか、もはや自分でもわからないことがあった。愛情の発作に駆られては、黙ってアントアネットの墓参りに出かけた。そして花をもっていった。オリヴィエはそれに長く気づかなかった。ある日墓の上にごく新しい花を見出して、ようやくそれと知った。しかしクリストフが来たのだという証拠を得るには、容易なことではなかった。おずおず言い出してみると、クリストフは不|機嫌《きげん》な乱暴さで話をそらした。彼はオリヴィエに知られたくなかった。そして執拗《しつよう》に隠しぬいた。がある日ついに、イヴリーの墓地で二人出会ってしまった。
オリヴィエのほうではまた、クリストフに内密で彼の母へ手紙を書いていた。ルイザへ息子の消息を伝えてやった。自分がいかほど彼を愛し敬服してるかを、書き贈った。ルイザもオリヴィエへ、下手《へた》なつつましい返事を書いて、感謝の念にくれていた。彼女はまだやはり息子《むすこ》のことを小さな子供のように語っていた。
愛に満ちた半ば沈黙の時期――「なぜともなく歓《よろこ》ばしい楽しい静安」――のあとに、二人の舌はほどけてきた。友の魂の中に発見の航海をすることで幾時間も過
前へ
次へ
全333ページ中32ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング