つまでも放っておかれるだろう、などと考えました。そして、それが世にもっとも恐ろしい不幸のように思えたものです。そんな所へみずから好んで住まうとは、そしてたぶんそんな所で死ぬだろうとは、当時夢にも思ってはいませんでした。しかしそう気むずかしいことばかりも言っていられなくなったのです。やはり今でも厭ではありますが、もうそんなことは考えないようにしています。階段を上がってくるときには、眼も耳も鼻も、あらゆる官能をふさいでしまって、自分のうちに潜み込んでしまうんです。それから向こうに、御覧なさい、あの屋根の上に、アカシアの木の枝が見えています。そのほかのものは何にも眼にはいらないように、私はこの隅《すみ》にすわり込みます。夕方、風があの枝を揺するときには、パリーから遠く離れてる気がします。ときおりあの歯形の木の葉がさらさらとそよいでるのを見ると、大きな森が波打ってる景色にもまして、私には楽しく思えます。」
「そうだ、僕の思ったとおりだ、」とクリストフは言った、「君はいつも夢ばかりみてるんですね。しかし悲しいことには、生活の意地悪さと闘《たたか》ってるうちに、他の生活を創造するのに役だつはずの幻
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