り革命を起こしたりすることに、なんで僕は働くものか。現在の病弊はある何かの制度から起こったものではない。それは、贅沢《ぜいたく》にとりつく天刑病であり、富と知力とにたかる寄生虫だ。やがて滅びてしまうだろう。」
「君たちを食い荒らしたあとにね。」
「いや僕らのような民族については、絶望ということは許されないのだ。この民族は自分のうちに、一つの大なる徳操を隠し持っており、光明と活動的理想主義との大なる力を隠し持っているので、この民族を利用し廃滅せしめようとする者どもをも感染さしてしまうのだ。貪欲《どんよく》な政治家どもでさえこの民族に眩惑《げんわく》される。もっとも凡庸な者どもも権力を得るときには、この民族の運命の偉大さにとらえられる。その運命は彼らを彼ら以上の所へ引き上げる。彼らの手から手へと炬火《きょか》を受け継がせる。彼らは相次いで、闇黒《あんこく》にたいする神聖な戦いをなしてゆく。彼らの民衆の精神に引きずられる。否応なしに彼らは彼らが否定してる神の掟《おきて》を、フランス人によって神がなしたもう行為[#「フランス人によって神がなしたもう行為」に傍点]を、完成してゆく……。親愛なる国、親愛なるこの国、僕はけっしてそれを疑わないだろう。この国が致命的な困難に際会しようとも、そのために僕はますます、世界におけるわれわれの使命をあくまで慢《ほこ》りつづけるだろう。わがフランスが戸外の空気を恐れて病室に蟄居《ちっきょ》することを、僕は少しも望まない。病苦の生存を長引かせることを僕は好まない。われわれのように一度偉大となった暁には、偉大でなくなるよりもむしろ死ぬほうがよいのだ。世界の思想をわれわれの思想界に飛び込ませるがいい。僕はそれをけっして恐れない。洪水《こうずい》の波は、その泥土《でいど》でわれわれの土地を肥やしたあとに、自分からくずれ去るだろう。」
「だが気の毒にも、そうなるまでの間は面白いことじゃない。」とクリストフは言った。「そして、君のフランスがナイル河から浮かび出してくる時分には、君はいったいどうなってるだろうかね。戦うほうがいいじゃないか。戦ったとて敗北の危険しかないだろう。君はすでに生涯《しょうがい》敗北に甘んじてるじゃないか。」
「いや敗北よりもずっと大きな危険があるかもしれない。」とオリヴィエは言った。「おそらく精神の安静を失う危険があるだろう。僕に
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