骨なある種の機才がないでもなかった。消化作用の神秘も歌い忘れられていなかった。ロアール河のほとりのこの詩神は、好んで荘重な語気を使っていた、それもダンテの名高い悪魔のような調子で、

[#ここから3字下げ]
「……彼はその[#「彼はその」に傍点]尻《しり》をらっぱとしていた[#「をらっぱとしていた」に傍点]……」
[#ここで字下げ終わり]

 この強健で活発快活な小さな男は、まったく性質の違った女――その土地の司法官の娘で、リュシー・ド・ヴィリエという女を娶《めと》った。ド・ヴィリエというのは、むしろドゥヴィリエというべきであるが、小石が坂をころがり落ちながら二つに割れるように、途中で二つに裂けてしまったのである。でこのド・ヴィリエ家の人たちは、代々司法官であった。法律、義務、社交的儀礼、完全な正直さで固められ多少道学者めいた気味のある個人の品位、ことに職業的品位、などについて高い観念をもっている、フランスの議会関係の古い家柄、その一つだった。前世紀において、彼らは、不平がちなジャンセニスムにもまれたので、ジェズイット精神にたいする軽蔑《けいべつ》とともに、悲観的な、多少不満がちなある
前へ 次へ
全197ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング