て身を落ち着けたのであった。その地で、現在のジャンナンの父であるオーギュスタン・ジャンナンは、銀行家としてすこぶる巧みに仕事をしていった。巧妙な人物で、百姓のように狡猾《こうかつ》で頑固《がんこ》で、根は正直だが小心翼々たるところはなく、非常な働き者で快活であって、ずるい質朴《しつぼく》さや露骨な話しぶりや財産などのために、十里四方の人々から重んぜられ恐れられていた。背の低いでっぷりした強健な男で、痘瘡《とうそう》のある太い赭《あか》ら顔に、小さな鋭い眼が光っていた。昔は色好みだとの評判だったが、あとまでその趣味を全然失いはしなかった。彼は露骨な冗談やりっぱな御馳走《ごちそう》が好きだった。食卓の彼は見物《みもの》だった。息子《むすこ》のアントアーヌがその相手をし、他に会食者としては数名の老人仲間がいた。治安裁判所判事、公証人、大会堂の司祭――(ジャンナン老人はよく牧師を食い物にしていたが、牧師が大食家であるときにはそれと会食する道をも心得ていた)――ラブレー風の陽気な土地の同じモデルでこしらえられてる丈夫な快漢たちだった。馬鹿《ばか》げた冗談が火のように燃え上がり、テーブルに拳固《げ
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