枝などを、それに突きさした。まるで野蛮国の小さな女王みたいだった。そしてただ一人で、噴水のまわりを跳《は》ねた。両腕を広げてぐるぐる回り、ついには眼が回ってき、芝生《しばふ》のうちにうち倒れ、草の中に顔を埋め、幾分間も笑いこけて、みずから笑いやめることもできず、またなぜ笑うかもみずからわからなかった。
 かくて二人の子供の日々は過ぎていった。たがいに少し遠ざかって相手を気にもかけなかった。――がときどきアントアネットは、通りがかりに弟へちょっと悪戯《いたずら》をしてみたくなり、ひとつかみの松葉を彼の鼻先へ投げつけ、落っことしてやるとおどかしながら彼が登ってる木を揺すり、あるいは、恐《こわ》がらすために突然彼へ飛びついて叫んだ。
「そら、そら……。」
 彼女はときとすると、彼をからかいたくてたまらなくなった。母が呼んでると言って彼を木から降りさした。彼が降りて来るとそのあとに登って、もう動こうとしなかった。オリヴィエは不平で、言っつけてやるとおどかした。しかしアントアネットが長く木に登ってる心配はなかった。彼女は二、三分間もじっとしてることができなかった。枝の上からオリヴィエを笑ってやり
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