なってる蜜蜂《みつばち》、何をするつもりか自分でもわからないでいる愚かないばりくさってる地蜂など――すべて、忙がしげな動物の世界を。彼らはどこかへ到着したくてたまらながってるように見えた……。どこへか? 彼らもそれを知らない。どこでも構わないのだ。ただどこかへ……。オリヴィエは、その盲目で敵意に満ちた世界のまん中にあって、ぞっと身を震わした。松ぼっくりの落つる音にも、枯れ枝の折れる音にも、小兎《こうさぎ》のように飛び上がった……。そしては、庭の向こう端に、ぶらんこの鉄輪の音を耳にして、ほっと安堵《あんど》した。ぶらんこには、アントアネットが猛然と身を揺すっていた。
 彼女も夢想にふけっていた。しかしそれは彼女一流の仕方でだった。貪欲《どんよく》で好奇心に富み笑い好きな彼女は、庭じゅうを捜し回って一日を過ごした。鶫《つぐみ》のように葡萄《ぶどう》の実を盗み食いし、果樹|墻《がき》から桃《もも》をひそかにもぎ取り、梅の木によじ登り、あるいは通りがかりにそっと梅の幹をたたいて、口に入れると香《かお》りある蜜のように融《と》ける金色の小梅を、雨のように振り落とした。あるいはまた、禁じられてるに
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